IYO DENTAL ASSOCIATION

伊予地区の子供たちのむし歯がなくなってきている!
≪「フッ素」って何? なぜむし歯予防に効くの?≫

「フッ素」ってなに?

食品100g中のフッ素量

 地球には約100種類の元素が存在します。フッ素は量の多い順に元素を並べた場合、土壌中では18番目、海水中では12番目になります。また、私たちの体もフッ素を構成元素のひとつとしており、人体に含まれるフッ素の割合は鉄よりも多いのです。フッ素は地中はもとより海水、河川水、植物、動物などすべてに微量ながらも含まれており、私たちにとりまく自然環境の中に広く分布している“自然環境物質”なのです。

《虫歯予防のフッ素》

 むし歯予防のフッ素には、普通、フッ化ナトリウムが利用されます。このフッ化ナトリウムは、天然の岩石である“蛍石”から精製されるもので、自然のフッ素そのものです。フッ化ナトリウムを水に溶かした場合(水道水フッ素添加、フッ素洗口など)、フッ素はイオン化します。一方、お茶や飲料水に含まれるフッ素もこれと同じイオン化したフッ素であり、その性質は全く同じものです。

人間が一日にとるフッ素の量

人間が一日にとるフッ素の量

 私たちが毎日食べたり飲んだりするものの中にも量は異なりますが、必ずといっていいほど含まれています。従って、私たちは毎日の食物から1〜2mgのフッ素を摂っています。

虫歯予防にフッ素が使われるようになった経過

 このような自然環境物質であるフッ素は、どのようにしてむし歯予防に応用されるようになったのでしょうか。

1.

天然に適量(約1ppm)のフッ素を含んだ水を飲料水として使っていた人々にむし歯が少なかったという事実の発見から始まりました。

2.

今世紀初めのアメリカで、同じ水源の水を飲んでいる地域の人々に集団的に発生する斑状菌(歯胚のエナメル芽細胞の石灰化期に、長期に渡り、高濃度(約2ppm以上)のフッ素を摂取したときに生じるエナメル質形成不全症。すでにエナメル質の形ができあがっている歯の表面から、フッ素を作用される洗口法などでは斑状歯は生じない)が発見されました。その原因は、飲料水中に過量に含まれるフッ素のためでした。また、同時にこれらの地域では、ほかの地域に比べてむし歯が少ないという事実も発見されました。

3.

この飲料水中のフッ素とむし歯の関係についての広範な調査がすすめられるうちに、自然の状態で、飲料水中に適量のフッ素が含まれている地域では斑状歯の発生もなく、かつ、高いむし歯予防効果が得られていることがわかりました。これらの地域住民の健康状態もさまざまな角度から検討されましたが、適量のフッ素は人体になんら悪影響を及ぼすことなく、むし歯予防にとってきわめて有効に働くことが確認されたのです。

4.

その後、1945年アメリカの3都市とカナダの1都市で、この自然の法則をまねて飲料水のフッ素を人工的に適量にコントロールしてむし歯予防を行う水道水フッ素添加が実施されたのです。

5.

この飲料水中のフッ素のむし歯予防効果に学んで、フッ素を直接歯に作用させようとするフッ素洗口、フッ素塗布、フッ素入り歯磨き剤などのフッ化物の局所応用が考え出され、わが国でも広く利用されるようになってきました。

フッ素によるむし歯予防のしくみ

以下のようにして、自然環境物質であるフッ素は確実なむし歯予防効果をあらわすのです。

むし歯の成立ち解説図  むし歯の成立ち
 口の中にはさまざまな細菌がすんでいます。そして、これらの細菌は、食べ物に含まれる砂糖を栄養として、ねばねばしたデキストランという物質を作り、歯の表面にくっついて、どんどん増えていきます。この細菌のかたまりが「歯垢(プラーク)」です。わずか、1gの千分の1の歯垢に、1億個もの細菌がいます。この歯垢に住みついているのが、ミュータンス菌などのこわいむし歯菌です。これらの菌は歯の大敵である、「酸」をつくり、歯の一番外側にあるエナメル質からカルシウムやリンを溶かしだします(脱灰)。これがむし歯の始まりです。
 フッ素はエナメル質を強化
 エナメル質は、ハイドロキシアパタイトというリン酸カルシウム系の結晶で構成されており、この結晶は、カルシウム(Ca)、リン(P)、酸素(O)、水素(H)の4つの元素からできています。むし歯菌によって歯が溶けるということは、これらがバラバラに分解してしまうことなのです。フッ素は、エナメル質を強化することによってむし歯に対する抵抗性を増強します。さらに、むし歯菌やその酵素の働きを抑制することによって、お口の環境を改善して、予防効果を発揮します。
フッ素はエナメル質を強化解説図
結晶の質的改善解説図  結晶の質的改善
 歯は顎の中で作られ、萌え始めるときすでに石灰化は完了していますが、この時期はまだ結晶構造にすき間や不純物が多いなど、かなりの不整があります。したがって、萌え始めの歯ほどエナメル質が弱いので、むし歯におかされやすく、進行もはやいのです。この生え始めの時期にフッ素が作用することにより、エナメル質の結晶が整って、歯質が強くなるのです。
 フルオロアパタイトの生成
 むし歯は、歯垢に生息している細菌が産生した酸によって、エナメル質からカルシウムやリンが溶け出すことによって始まります(脱灰)。しかし通常の状態では、唾液に過飽和に存在するカルシウムやリンが、すぐに脱灰した部分に再沈着するのです(再石灰化)。フッ素にはこの再石灰化を促進させる効果があります。
フルオロアパタイトの生成解説図
再石灰化の促進解説図  再石灰化の促進
 フッ素は、健全なエナメル部分よりも脱灰部分に多く取り込まれるという特徴を持っています。脱灰された部分では「脱灰」と「再石灰化」が絶えず繰り返されています。微量のフッ素が絶えず供給される状況下では、「再石灰」の反応が「脱灰」の反応よりも強く働くようになります。そうすると、エナメル質は再び硬化して正常なものへと修復されていきます。

《抗酵素作用・抗菌作用》

フッ素は、歯質の強化以外にもむし歯を予防する働きを持っています。フッ素は、細菌の持つ酵素の働きを弱め、酸の産生や歯垢の形成を抑制する働きがあります。

BACK NEXT


Copyright © 2002 Iyo Dental Association. All Rights Reserved.